2019年10月18日(金)~21日(月)まで、「市民参加で作るくらしのしくみ~「ジェンダー平等」と「メディア」の現場を訪ねる韓国スタディツアー」を開催しました。
70~90年代に韓国でセミナーや講座を開催するなど、市民間の交流を重ねてきた早稲田奉仕園。昨年から再び「韓国スタディツアー」という形で、人々がどのように民主的な社会をつくろうとしているのかを学びにいこうと、新しいプログラムを開始しました。昨年はまちづくりや多文化共生などがテーマでしたが、今年は「ジェンダー平等」と「メディア」をテーマに韓国のさまざまな現場を訪問しました。(プログラム内容についてはこちらをご覧ください)
「もう泣き寝入りはしない」と韓国で大きくひろがった #MeToo, #WithYou ムーブメント、そして言論弾圧に屈せず市民との関係を築き上げてきたメディアの実践の状況から、私たちの暮らす日本に大切なヒントを持ち帰ろうという趣旨のツアーでした。
3泊4日という短い期間で訪問したのは約6ヵ所で、内容も濃い盛りだくさんな日程でした。20代から80代までが参加し、このように幅広い年齢層の方々が一同に集い、ジェンダーのことについて学びに行くというのはとても画期的なことのように感じました。同時に、昔から現在までに国や年代を超えて共通する課題であることを、皮肉にも実感させられる出来事のようにも感じます。
ソウル市にある女性団体を中心に、韓国の民主化を導いた現場なども訪問しましたが、お話をしてくださった方々はどの現場でも熱意を持って仕事に臨んでいることが伝わりました。一方、このツアーの参加者の方々も負けておらず、ある訪問先では「これまで海外から様々な団体訪問を受け入れているが、こんなに質問がとまらないのははじめて」のことと驚きを見せていました。
ソウル市女性家族支援財団にはジェンダーに関する本だけを置いた図書室があり、本棚も奥にいくにつれて高くなっていってるのは知識を積み上げて平等に近づいていくようにという理由だそうです。施設の案内やソウル市女性政策や財団の歴史などの報告を様々な職員さんから伺い、行政の「ジェンダー平等」への取り組みの実践を学びました。懇親会は色とりどりのおかずが並んだ韓定食。ツアーには特別ゲストとして、7月に開催したSTUDY HALL vol.31「女たちは声をあげはじめた~『私たちにはことばが必要だ』からみる韓国の女性たちのいま~」で司会を務めてくださった梁・永山聡子さんにお越しいただき、お話していただきました。
市政の取り組みの話とはまた別に、民間の団体が女性たちへのより身近な支援者としてどのように関わっているのかについてもお話を聞きにいくことができました。実際にホームレス経験や性売買経験のある女性たちが暮らす住居を見学させていただくだけではなく、地域コミュニティの形成も大切にしているということで、住宅街の一角で支援団体によって運営されているカフェもありました。
訪問先が盛りだくさんなツアーだったので移動で疲れていたところ、ちょうどこのカフェで皆さん一息つきながら具体的な支援の説明も受けることができました。
最後カフェの前で集合写真を撮ろうとしたとき、目の前の食堂のおばちゃんが出てきて日本から来たことを歓迎してくれながらカメラマンになってくれました。街の人の温かさにも触れ合う瞬間です。
また、独裁政権時代の反省から市民と共に立ち上がったハンギョレ新聞社では、元東京特派員だった記者さんがお話をしてくれたり、では実際に独裁政権下でどんな残酷なことが起こっていたのかということを私たちがこの目で確かめるためにも「民主人権記念館」を訪問したりもしました。
最後には、韓国のフェミニズム運動をけん引する性暴力相談所の職員の方々の熱いメッセージに勇気づけられ、無事に3泊4日の濃密な旅を締めくくることができました。
参加者の皆さんからはこんな感想がありました。
「「社会は前に進んでいる。国を超えて連帯する事が大切」と、性暴力相談所の専門員が語る声が今も耳に残る。」
「スタディツアーを通じて学んだことの1つは、社会の中で生きづらさや困難を抱えている当事者を中心に、ともに運動をすすめるという視点です。」
「その施策の一つ一つが実に女性の立場に立って、女性の幸せのために果敢に立ち向かい、政策を作り政府に働きかけ、公の援助を引き出し、民間の寄付を募り、と頭が下がりました。性被害を受けた当事者の回復にかかる費用や手間をちゃんと経済的に計算するというその細かな視点にもビックリです。」
「日本では空気を読んで、思っていることもあまり言わないことが普通とされているので、そこが状況の違いを生んでいるのかとおもいました。そんな社会がありえるのかと思うと力がでました。日本でもおかしいこと、嫌なことはNo!という取り組みを続けていきたいと思います。」
「このツアーで何度も一般市民の行動に驚かされた私は、実は市民の力というものを信じていなかったのだろうなとも反省している。この「信じなさ」は同時に、「自分自身に大した力は無い」という諦念でもある。しかし私を含めた市民には力があり、あきらめてしまうのはもったいないことなのだ。ツアーで出会った方々から、そういったメッセージを受け取ることができたように思う。」
このツアーに関わってくださったすべてのみなさま、本当にありがとうございました!