STUDY HALL vol.32 大西暢夫写真展「ひとりひとりの人―精神科病棟取材17年の記録―」を開催しました

10月23日(水)~27日(日)まで、STUDY HALL vol.32 大西暢夫写真展「ひとりひとりの人―精神科病棟取材17年の記録―」が、早稲田スコットホールギャラリーで開催されました。

この写真展はタイトルにもあるように、写真家の大西暢夫さんが日本全国の精神科病棟に向かい撮りためてきた人々のほんの一部の記録です。北は北海道、南は沖縄までと、多くの精神科病棟に長期入院している方たちにお話を聞きながら、大西さんは写真を撮ってきました。精神科看護の専門誌にのせるグラビアの撮影を頼まれたことにより始まったこの取材は17年目、今ではその雑誌の230回ほどまで続く連載になっているといいます。

ギャラリーの赤煉瓦の雰囲気が写真をより引き立てていてか、大西さんがカメラに収めてきたひとりひとりの患者さんたちは、普段私たちが「長期入院患者」としてもっているイメージをひっくり返すかのように、生き生きとした表情を見せています。笑顔をとらえた写真が多くあるのも印象的でしたが、全体的に大西さんの写真は、人とのかかわりあいの中で何かに真剣に取り組む日常の一端をやさしく自然におさめているような印象がありました。そこには「病気」を撮るのではない、その人「ひとりひとり」を撮るという大西さんの姿勢が表れているようでした。その写真家としての強い意志とは逆に、観る者と被写体の距離をぐっと縮めてくれたのが、飾らない言葉でつづられたキャプションです。大西さんの素朴な感想も交えた一言一言が、私たちが患者さんたちの日常に想いを馳せる上での欠かせないガイドとなっていたことも、この展示の魅力でした。

展示の最終日27日には、大西さん監督作品の映画『オキナワへいこう』の上映会も行われました。この映画は、患者さんの「沖縄に行きたい」という夢を実現させるために「精神科病棟の長期入院」の現実をユーモラスに描いたドキュメンタリーです。

2回の上映の合間には、大西さんのトークもお聞きすることができました。結局この映画では、主治医の許可が下りず3人が沖縄に行くことができなかったのですが、大西さんは「(この映画を通して)精神科のことを知ってもらうのも重要だけど、なんでこの6・70代そこらのおっちゃんたちが(どこかに自由に)行けないのかという疑問を一緒にもってもらうことが大事」とおっしゃっていました。もしみんなが問題なく沖縄に行けていたら、映画にはせずホームビデオで終わっていただろうといいます。

上映会&トーク参加者のみなさからはこんな感想がありました。

「自分の中にあるわだかまりが少し軽くなった気がします。なんでも知ろうとする気持ちから始まりますね。」

「貴重な映像、お話をありがとうございました。自分の家族にも重なる部分があり、私ももっと知ることから始めたいと思い参加しました。これからも注目していきたいと思います。」

「私自身も精神疾患患者です。映画の中で、患者さんが、病院を出ることが怖い、沖縄に行けないと心の葛藤場面がいくどか出てきましたが、すごく理解できました。自分自身にも同じような葛藤・恐怖がありますので、同じなんだなと思え、少しホッとする部分もありました。」

「益々たくさんの方にみていただけるといいなぁと思いました。支援者として、彼らをエンパワーするかかわりができるよう気をつけていきたいと改めてかんじました。ありがとうございました。」

次回、STUDY HALL vol.33は「ブルースハープの世界」です。12月7日(土)14時から、ブルースハープというハーモニカの奏者・浅見安二郎さんをお招きして、ギャラリーコンサートを行います。楽器の簡単な楽しみ方も交えながら、ぜひ素敵な音楽の音色に癒されにきてください。お申込みは早稲田奉仕園HPから。

https://www.hoshien.or.jp/program/manabiya/studyhall/vol33.html

 

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