インド映画「マントー」上映会

映画「マントー」はインドを代表する俳優でもあるナンディ・ダース監督の作品です。

タイトルにもなっているマントーとは現代インド文学を代表するウルドゥー語作家で、英領インド期に現インド側パンジャーブに生まれた人物です。インド・パキスタン分離独立を機に1948年パキスタン側へ移住し、社会の底辺に生きる人々を主人公に据え、生き生きと大胆にその様子を描きました。性を扱うその作風から猥褻作家との非難を浴びるなかで、表現の自由に果敢に挑み信念を貫いた作家の人生がこの映画で表れています。

舞台は1946年インド、イギリスからの分離独立へと向かう動乱期。戯曲の才能にも優れ、多くの友人や妻サフィアに支えられていた人気作家のマントー(ナワーズッディーン・シッディーキー)は、ボンベイを拠点に活躍していました。1947年8月インド・パキスタンが分離独立し宗教対立が激化したその頃、マントー自身もパキスタンへを移住を迫られるなか作家としての危機も迎えつつありました。性をありのままに描く作風は検閲の対象となり、長期に及ぶ裁判に苦しめられ、やがて生活は荒廃していきます。

その後の1955年に43歳という若さで亡くなったことまでは映画の中では触れられていませんが、そのことを考えると、いかに検閲や裁判がマントーに影響を与えたのか想像することができます。

映画には、マントーのいくつかの小説のワンシーンが、彼の人生と交差するように織り交ぜられながら描かれています。彼の残した作品や、インド・パキスタンの歴史を知らないと少し難しい内容ではありますが、普段私たちがイメージする楽しいインド映画とは一線を画く、違った一面を見ることのできる映画でした。

これを機に、歴史や表現の自由の議論の大切さに気付かされた方も多いのではないでしょうか。

上映会当日10月11日(金)には、34名の方がお越しくださいました。HMIホテルグループ主催、早稲田奉仕園共催という形で実現した上映会です。「アジア語学特別イベント」としても開催されたこの上映会ですが、作中にも使用されていたヒンディー語も学べる「アジア語入門土曜集中講座」は、早稲田奉仕園で11月16日(土)から始まります。他にもベンガル語・ベトナム語・モンゴル語講座がございます。申込期限は11月8日(金)まです。

上映翌日に大型台風19号が関東に上陸するということで天候もあまり優れないなか、わざわざ足をお運びいただき、ご関心をお寄せくださった皆さまありがとうございました!

 

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