STUDY HALL vol.29 桃井和馬写真展・講演会「和解への祈り」を開催しました

6月7日(金)から12日(水)まで、写真家・桃井和馬さんの写真展が日本キリスト教団出版局との共催で開かれました。桃井さんはこれまで140ヵ国以上を取材し、たくさんの風景をカメラで撮らえてきました。今回の写真展は昨年11月に出版された『和解への祈り』の出版記念として、この写真集の写真をもとに構成されています。

スコットホールギャラリーにて行われた6日間の展示には、94名の方が訪れ、静かな雰囲気の中で人々が鑑賞していました。初日には桃井さんによる情熱のこもったギャラリートークも行われ、あいにくの雨だったにもかかわらず30名程が集まり、桃井さんが現地で直接見聞きしてきた体験を、それぞれの写真のストーリーとともに聞くことができました。世界各国の紛争地や共生の場を訪れたことによって、とくに「宗教」という視点から、桃井さんは「和解」とはなにかを考え続けています。

その話をもっとくわしく聞くために、8日(土)にはスコットホール講堂にて、講演会「和解への祈り~地球の上を歩きながら考えたこと」が開かれました。62名の方が参加してくださいました。戦争の原因は「火に油を注ぐ」ことから始まるという印象的な話から桃井さんははじめました。ここでいう「火」とは、要するに土地(領土)・食料・水・資源などといったお金になるもので、これらに「油」とされる民族・宗教が注がれることで争いがおこるのではないかといいます。その際に、必ず利用されるのが音楽やスポーツだと示唆されていました。2020年が近づくなかで、東京オリンピックにも何か通ずることがあるのではないかという思いが浮かびました。

 

展示にもいくつもの写真が登場していたエルサレムについて印象的だったのは、アラブ人街のお土産屋のメインの売り物は十字架にもかかわらず店主はムスリムだったという話です。キリスト教にとってはイエス・キリストが十字架にかかり葬られた場所であり、イスラム教にとっては預言者ムハンマドが天に旅立った場所であり、またユダヤ教にとってはもっとも大切な神殿の跡となっている場所でもあるという、3つの宗教の聖地が集まったエルサレムを端的に想像させてくれるようなエピソードでした。現地に直接足を運ばなければそのような共生のあり方があるなんて私たちは気づけないまま過ごしていることでしょう。

数々の興味深いお話の中で、今年3月に桃井さんが桜美林大学の学生たちとともに行ったプロジェクト「サンチャゴ巡礼」の様子も伝えてくださいました。スペインに住む人々が守るサンチャゴ巡礼路。一人の学生が途中で靴を壊すとスニーカーを一足買ってくれることになったり、一人の学生が休憩所にスマートフォンを忘れると350㎞先まで車で先回りし届けてくれることになったりと、巡礼地保全にかかわる現地の人々にとって「道を守る」こととはどういうことなのか考えさせられるエピソードも聞くことができました。実際に、会場には巡礼プロジェクトに参加した12名の学生のうち5名が駆け付け、感想を述べてくれるなど、そこで現地の空気を体感した人にしかわからない経験を分けてもらえるような実りの多い時間でした。

 

 

 

コメントを残す