10/21当日、台風上陸が迫る風雨の中、トークイベントには70名もの方が参加してくださいました。
会は桂川潤さんの、「装丁とは何か?」というお話しからスタート。日本で初めての装丁家は、なんとあの夏目漱石で、岩波書店から出版された「こころ」が漱石自らが装丁を手がけた最初の本だったそう。意外な「装丁」と「岩波書店」との関係です。
その後は桂川さんが手掛けた装丁の数々、また坂本政謙さんとタッグを組んだ本の中から印象に残る作品を厳選して紹介。
なかでも、今や有名な研究者が駆け出しのころの論文をとりあげた「思考のフロンティア」シリーズは、「研究書をヒット作にする編集者として確かな力を持つ」と坂本さんを称えると、今度は「地味な硬い内容のシリーズを装丁で引っ張ってもらった」と、坂本さんが桂川さんを称えて、お二人の深い信頼関係を垣間見ることができました。
実は編集者になる前から佐藤正午の熱烈なファンだったという坂本さん。佐藤正午さんに「とにかくエッセイは岩波でやるから」と言わしめたほどの信頼を得て、岩波からは9冊の本が出ています。そして、そのすべてを桂川さんが装丁しています。
今回直木賞を受賞した書き下ろし小説『月の満ち欠け』は依頼から脱稿まで、実に18年が費やされたとのこと。そんな小説家と編集者のエピソードももちろん楽しかったのですが、装丁が出来上がるまで8パターンも試作を重ねた、編集者vs装丁家のギリギリの攻防が、桂川さんのスピーディーかつ軽妙な語り口で語られ、いやはや装丁とはこれほどまでのプレッシャーの中から生まれるものかと感じ入りました。
会場には『月の満ち欠け』の挿画家の宝珠光寿さんもいらして、ご挨拶をいただいたり、講談社の佐藤正午番の編集者から発言してもらったり。終始なごやかに、かつ知的に楽しい時間となりました。
次回のSTUDY HALLは、2018年1月13日「スイス人留学生が語る 1960年代日本映画の政治的潮流」(仮)です。お楽しみに。