STUDY HALL vol.44 映画〈戦後在日五〇年史 在日〉から30年 上映会&トークを開催しました!

11月8日(土)、STUDY HALL vol.44 【映画〈戦後在日五〇年史 在日〉から30年 〜在日女性とクィアが語る、あれから変わったこと・変わらなかったこと・そしてこれから変えたいこと〜】を開催しました。

*こちらのイベントは、2026年3月実施予定の山口スタディツターのプレイベントとして開催されました。ツアーについてはこちら

カッコ付きの「戦後」から80年。
在日2世の呉徳洙 (お どくす) 監督のドキュメンタリー映画〈戦後在日五〇年史 在日〉の公開から30年が経ち、開催された今回のイベント。スコットホールには107名の方が訪れました。20代から80代まで幅広い層の方が参加してくださり、とても盛況な会となりました。

1997年に公開されたこの映画は、解放から50年に及ぶ「在日」の歴史を映像化したものです。前半「歴史編」と後半「人物編」合わせて4時間半となる大作ですが、今回の上映会では「歴史編」のみの上映となりました。映画は膨大な映像資料、インタビュー証言をもとに在日をめぐる様々な出来事で年代順に構成され、50年分の歴史が凝縮された2時間15分でした。歴史編では男性以外がほとんど登場しないという制約もありましたが、目の前にしたものすごい情報量と濃密さに参加者の誰もが圧倒され、歴史のダイナミズムを感じさせる貴重な作品でした。

監督は今から10年前に亡くなられているため、トークでは公開当時の新聞資料から、この映画が日本社会ひいては在日社会にどのように受け止められ、どのように影響を与えたのかなど監督の言葉も紹介させていただきました。公開7ヶ月目の時点ですでに1万5千人の動員があったようで、その反響の大きさを感じます。

今回のトークゲストには、在日本朝鮮人人権協会より朴金優綺さんをお招きし、在日コリアン3世である奉仕園スタッフが司会を務めました。朴金さんには、映画の感想も振り返りながら、この30年で特に激化した日本の排外主義の状況についてお話をいただきました。特に映画の中にも出た1948年の「阪神教育闘争」。日帝からの解放直後、子供たちに、奪われてきた朝鮮語を教えるための朝鮮学校が日本各地に建てられ始めますが、それを日本政府とGHQは徹底的に弾圧をします。その時の弾圧をスタートに、今も朝鮮学校がどのような状況に置かれているのか解説していただきました。通学定期券の割引対象外、スポーツ大会への出場不可、大学受験のハードル、チマチョゴリ切り裂き事件などの差別が続きましたが、社会状況も少しずつ改善されてきた矢先に始まった高校無償化制度排除問題。地方自治体からの補助金も不支給もしくは減額される状況も相まって、長期的に見ると多くの朝鮮学校が経営難で存続の危機に陥っています。

一方で、「日本軍性奴隷制の否定を許さない4.23アクション」や在日朝鮮人女性および性的マイノリティの交流会など人権協会の活動についてもお話いただき、これからの百年史に向けての希望も語らいました。人種とジェンダー、どちらかだけではなく複合的なマイノリティ性を抱える人にとって、人権協会の活動は心の拠り所となっているようです。

とても40分では語りきれないことばかりで、時間が足りないくらいでした!ずいぶん駆け足になってしまったので、参加者からは「もっと聞きたかった」とのお声もいただきました。

今回はトーク時、早稲田奉仕園でも初の試みとして、スクリーンへ字幕をの映し出しを行いました。使用したのはUDトークというアプリで、喋ったことを自動で書き起こして文字化してくれるサービスです(どなたでも無料でPCやスマホにアプリをインストールすることができます)。耳が聞こえない方はもちろん、聞こえづらい方、日本語学習中の方などにとって日本語字幕があることでイベントに参加しやすくなります。様々な背景を持った人がのイベント参加ハードルを下げるためにも、今後社会にこのようなアクセシビリティの考え方が広がっていけばいいなと思います。

 

来場者からはこのような感想がありました。

「映画自体も観ることができて本当に良かったし、足りない部分や+αをトークで聞けてとても満足なプログラムでした。」

「植民地支配とは一体何なのか。言葉の意味は理解していても、実際に歴史の中でどういった抑圧を在日朝鮮人の人々が受けてきたのか知る機会が、のうのうと暮らしていると本当にないなと実感しました。戦後50年の歴史とそれから30年経った今の状況と映画では語らえないクィアや交差性のトークで聞けて大変貴重な機会でした。」

「日本人のクィアです。男性中心という制約はあったとはいえ、在日朝鮮人の人びとを取り囲む社会や政治の歴史をテンポのよい編集で概観することができ、たいへん学びになりました。同時に、マジョリティであることに由来する無知も痛感し、自分の社会や政治にたいする関心のもちかたが自分の痛みだけから出発するきらいがあり、他者の経験する抑圧や痛みには同等の関心を寄せていなかったことを感じました。」

 

山口スタディツアーのご参加もお待ちしております!

 

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