70余年前の戦時中、日本軍兵士に売春行為を強いられたとし、日韓の間で様々な議論を呼び起こしてきた「慰安婦」問題。日本では2015年の日韓合意によって外交上解決済みとの立場をとっていますが、先月国連総会で文 在寅 氏が韓国の大統領として初めてこの問題に触れるなど、問題浮上の1990年代から30年が経った現時点でも解決への糸口が見えない状態です。
9/29(土)には「慰安婦」問題を扱ったドキュメンタリー映画「主戦場」の上映会を行い、この問題の真相に近づいてみました。雨の中にもかかわらず、27名の方々が参加してくださり、監督のミキ・デザキさんと語り合いました。
映画「主戦場」の一番の特徴は左右の立場の学者や政治家、活動家がインタビューで登場し、それぞれの主張の相違点を比べつつ、文献を辿って歴史的事実に即してこの問題を検証していることです。質疑応答の時間に映画を作るようになったきっかけについて質問があり、ミキさんはある話を聞かせてくれました。
彼は留学や英語教師として働くため日本に滞在していた当時、彼の目に映ったのは沖縄や在日朝鮮人・韓国人に対する差別が蔓延している状況でした。しかし、あまりその事情に触れる人はおらず、日本に存在する人種差別について誰も語らなかったことをおかしく思っていました。その想いを語ってYoutubeに投稿すると、彼は無数の嫌みのコメントや脅し、彼の勤務先にまでバッシングを受けることになりました。
のちに、彼はあるニュースを聞きました。過去「慰安婦」記事を書いた元・朝日新聞の記者やその家族にまで及ぶバッシングを受けているというニュースでした。
「人を狂気に駆らせるこのナショナリズムはどこから起因するか」。彼は答えを見つけ出すために、また来日を決めました。上智大学修士課程で学んだ3年間、カメラを回し続けて、この映画が完成しました。今年10月の釜山国際映画祭には上映作として選ばれました。今回はその映画祭直前の最後の上映会となりました。
トークの合間には監督が映画の制作中に感じた想いや体験などを語ってもらいました。参加者たちは予定の終了時刻が過ぎることも忘れるほど、様々な意見と質問をぶつけてくれました。
映画の最後のシーンは、口を閉ざしていた被害女性の中で、最初に勇気ある証言者として声を上げた金 学順さんの証言映像でした。この問題に対する議論や論争は絶えなくとも、この問題を考える上で最も大事なことは、被害者に共感しその気持ちを重んじること、そのように語りかけてくれているような気がしました。