5回目となる富士登山プログラム、奉仕園居住のドイツからの留学生、韓国からの研究者に加えて、NPO「ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト」さんの協力をいただいて、今年も福島から首都圏に自主避難されている2家族をお迎えし、奉仕園からは9名が参加しました。
登山前日はYMCA東山荘に1泊。専門スタッフから登山の心得や荷物のチェック、富士山の魅力を伝える映像を使ってのガイダンスを受け、いやがうえにも明日からの登山へ胸が高まります
翌朝、目覚めると青空に聳える山の雄姿が…を期待していましたが、どんよりとした天候で富士の一片も見えません。午後には雷雨の可能性もあるとのことで、ふと風雨に見舞われた昨年を思い出します。しかし、「富士山ではどんな天気もいい天気」と語るYMCAスタッフに励まされ、神戸からの子どもたちとの合同パーティーとして20数名が一列になって、9時前に標高約2000mの5合目から登山開始。
私たちのルート「須走口登山道」は最も緑の豊かなコースとして知られ、はじめは鬱蒼とした森の中を進みます。高山病を避けるため、ゆっくりゆっくり歩き40分ごとに10分程度の休憩をとり、食物と水分を補給します。
富士山はその形からもわかるように、頂上まではひたすら登り道。高度を増すごとに木々は低くなり、森林限界を超えると岩だらけの山肌にぽつぽつと草が見えるだけの世界になります。視界を妨げるものがないので、上には山頂、下に麓の街並みや富士五湖が見える…ハズですが、相変わらずの霧の中を歩きます。3000mの標識を超えると、さすがに「高い!」という感じでひんやりとしてきます。空気もいよいよ薄くなり、いつしか皆さんのおしゃべりの声も聞こえなくなります。午後3時過ぎ、待望の本7合目3140m「見晴館」に到着、今日はここで泊ります。重たいトレッキングシューズを脱ぎ小屋に入ると、心底ほっとします。日暮れを迎えるころには天気も回復し、眼下の雲海には影富士らしきものも出現。明日は良い天気となるかもしれません。夕食のカレーをいただき、おやすみなさい。
登山2日目は午前2時に起床。セーターを着こみ、手袋やニット帽で防寒対策をして外に出ると星空の下、気温は5℃を下回っています。2時半に全員そろって出発、いよいよ頂上をめざします。昨日と同じテンポで進むうち、東の空が漸う明るくなり、4時半ごろ3500m地点でご来光を迎えます。太陽は毎日毎日昇るのに、あらためて1日の始まりを見届けると、今日の一日がとても新鮮な、貴重なものに思えるのが不思議です。
3570mの9合目を超えると「胸突」と呼ばれる岩だらけの急斜面が待ち構え、まさに最後の難関です。ハァハァゼィゼィヒーヒー息を切らしながら20分ほどよじ登っていくと、狛犬がお出迎え、遂に頂上に到着です。みなさんと苦楽を共にし、互いに声を掛け合い、励まし合って全員で山頂に立てた時の感激はひとしおです。この登山が日本留学の一コマとして、ご家族の思い出として、いつまでも心に留めていただけたら幸いです。